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とりとめのないブログ・・・

税理士・中小企業診断士 篠川徹太郎事務所

国境調整税と消費税

フランスではマクロン氏がルペン女史に勝利し、フランスのEU離脱は回避されたと歓迎する声が多数を占めているようです。

一方のイギリスでは、メイ首相率いる保守党が支持を固め、EU離脱へ向けて着々と準備を進めています。

アメリカのトランプ政権は、ドイツ・フランスを中心としたEUとは距離を置いていますので、英米 vs.EUといったシナリオが現実味を帯びてきます。

税制面から見た場合、EUはその生い立ちからして付加価値税(日本における消費税)と緊密に結びついています。一方の英米は、伝統的に直接税を中心とした課税体系を築き上げてきたわけですが、戦後の付加価値税の導入により、関税に頼らない輸出奨励型の税制をEUに構築され、現在では守勢に回っている、といった状況ではないでしょうか。

こうした状況を打開するため、アメリカでは国境調整税の議論が本格化しているようです。小生の理解では、国境調整税とは、輸出免税・輸入課税といった付加価値税(日本における消費税)と同様の仕組みを、法人税など直接税課税において実現しようとするものです。

以下、具体的な数字を用いて説明します。なお、ここに記してある事柄は、平成29年3月30日の日経に掲載された星岳雄氏の論考を参照しています。

前提として、世界の国々が法人税率20%、消費税率10%と同一であると仮定して、登場するのはA社・B社・C社とします。A社は原材料を生産し輸出している企業、B社は原材料を輸入し消費財を輸出している企業、C社は消費財を輸入し国内の消費者に販売している企業とし、その損益が次のようなものであるとすると、法人税額および消費税額は大雑把に言って以下の通りとなります。

  仕入 人件費 売上 利益 法人税
20%
消費税
10%
税額 計
A社 0 300 500
(輸出)
200 40 0 40
B社 500
(輸入)
180 800
(輸出)
120 24 -50 -26
C社 800
(輸入)
100 1000 100 20 20 40

ここで特に問題になるのは、B社のような材料を輸入して製品を輸出するような企業であって、アメリカには付加価値税がないため税金の還付を受けることが出来ず、これにより企業の海外移転が促進されている、といった議論に結びついてゆきます。

これに対して、法人税において国境調整税を導入した場合は次のようになります。なお、課税所得に輸出額は減算・輸入額は加算し、簡単のため法人税率は一律20%とします。

  仕入 人件費 売上 調整前
利益
国境
調整
調整後
利益
法人税
20%
A社 0 300 500
(輸出)
200 -500 -300 -60
B社 500
(輸入)
180 800
(輸出)
120 +500
-800
-180 -36
C社 800
(輸入)
100 1000 100 +800 900 180

このようにして、いわゆる仕向け地国課税が法人税という直接税において実現することになります。これは別におかしな議論だとは思わないし、輸出入のインボイス管理をしっかりやれば良いだけの話なので、課税技術上も充分対応が可能であると思われます。

税制をめぐる英米 vs.EUという「巨人の争い」といった趣ですが、さて??

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