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税理士・中小企業診断士 篠川徹太郎事務所

ポイント還元制度は失敗だ

10月からの消費税増税に合わせて導入されるキャッシュレス決済におけるポイント還元制度。実施まであと1月を切った今、制度の不備がいよいよあらわになってきているような気がします。

【不備その1:中小事業者が登録しない】

そもそもこの制度、中小事業者がカードなどキャッシュレス決済を現に行っているだけでは足りず、カード等決済事業者に対して審査の申し込みをして登録を受ける必要があります。

中小事業者のうちこうした登録を受けているのは、一説によると全体の20~30%程度ではないかといわれています。

横浜市の例を少し調べたところ、7月末までに登録を受けた事業者は約3200事業者で、そのうちおおむね半分程度は大手チェーン店のフランチャイズのようで、そうすると、本来の中小事業者としては実質的に1000~2000事業者程度しか横浜市において登録を受けていないものと思われます。

これはどう考えても少ない数字でしょう。

ポイント還元制度の趣旨として、消費税増税による消費の落ち込みを、特に中小事業者に対して手厚くケアしてゆくということだったはずですが、これでは笛吹けど踊らず、効果がなかったというだけではなく、むしろ逆に、官製値下げの網の目からこぼれ落ちてしまったような中小事業者の経営を圧迫する要因にすらなってくる。

このように登録が進まない原因は、中小事業者の知識不足や行政によるPR不足といった面は確かにあるかもしれない。しかしそれ以上に、中小事業者にとってカード手数料による収益の圧迫が重くのしかかっているという事実を、この制度の立案者たちは軽視しているように思われるのです。

【不備その2:不正なポイント還元に対して対策はあるのか】

ポイント還元を不正に受けるやり方は大きく分けて二通りあると思われます。

  • 新幹線の回数券等、金券ショップで定価の95%以上の金額で買い取ってもらえるものを大量に購入するやり方
  • 2以上の事業者で結託し、ありもしない架空の取引を延々と繰り返すやり方(不正転売)

 一つ目のやり方について、ネットでザーと見たところ、新幹線の回数券などでも95%以上の買取率はあまり無いようだし、カード会社としても換金性の高い商品の購入に関してはにらみを利かせているとのことなので、あまりメリットは出てこないのかもしれません。

二つ目のやり方に関しては、カード手数料 3.25%(さらに、1/3 は国が補助するので実質的には 2.166%)とポイント還元される5%の差額 = 2.834%は間違いなく手元に残る計算になります。こうした不正転売の問題は、ポイント還元制度の概要が発表された当初から問題視されており、何らかの具体的対策が取られるのか注視していたところ、結局何も対策することなく10月からポイント還元制度が実施される運びとなっています。

繰り返しますと、制度上の不備のため不正転売の問題には何も対策することなく10月からポイント還元制度が実施される運びとなっています。

不正転売を繰り返すことによって、表面上は取引が活性化しているように見えるので、もしかしたら10月以降の経済指標が上向いちゃうかもしれません。その場合、実態としては不正転売なのに、「政府の景気対策を功を奏している」なんてコメントがマスコミ等から出てきてしまうかもしれない。笑うに笑えない事態というべきでしょう。

【不備その3:そもそも誰のための制度なのか】

日本でのキャッシュレス決済が諸外国と比べて立ち遅れているので、中小小売店の生産性が見劣りすると。したがってフィンテックをさらに加速させ中小小売店の生産性向上を実現するため、消費税増税の際の景気下支えと合わせてキャッシュレス決済を広く普及させ、東京オリンピック2020へ向けて先進的な国造りを目指してゆく云々・・・とまぁ、そんな調子で作文したんでしょうけど、キャッシュレス決済を推進する人々は、二つの視点を捨象しているような気がします。

一つ目は、現金決済について、一概に古臭いやり方だしコストがかかる、と決めつけて切り捨てるのはいかがなものか。日本は偽札が極端に少なく、またコソ泥や強盗の危険も少ないため現金を持ち歩いても不安はない、そういった国としてのトータルな安全性が現金決済の普及を支えているわけだから、現金決済を否定的にとらえるべきではないと個人的には思うのだが如何。

二つ目は言わずもがな、カード手数料が中小事業者の収益を圧迫しているという事実について、この制度の立案者たちがどのように考えているのか、聞いてみたい気がします。中小事業者にとってキャッシュレス決済が普及することは短期的にもまた中長期的にも何のメリットもないわけですから。

キャッシュレス決済が普及することで利益を享受するのはカード等決済事業者、それもペィペィなど新興の事業者が、この制度の概要が発表された直後から芸人などを宣伝に使って一気に導入キャンペーンを繰り広げているさまは、これはもうちょっとやばいレベルで本末転倒だと感じています。

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