とりとめのないブログ・・・

税理士・中小企業診断士 篠川徹太郎事務所

カリフォルニアのギグワーカーと日本の職人さん

カリフォルニア州で独立事業主の定義の見直しを含む新法が成立したとのこと。新法によると、次の3条件をすべて証明しなければ独立事業主として認められないとのことです。

  1. 会社の管理監督下にないこと
  2. 会社の通常業務の範囲外の仕事をしていること
  3. 同じ業界で独立した事業を手掛けていること

逆に言えば、これら3つの条件を一つでも欠いた場合には、会社は労働者を従業員として扱い、最低賃金の保証や失業保険等の手当が必要になってくるとのことです。

条件1に関しては、日本でも同様の判断基準があります。しかし日本の場合、明文化しているのはほぼこの規定のみで、あとは「実態に応じて判断する」などと逃げを打っているケースがほとんどです。

条件2については、私には今のところ趣旨がよく分かりません・・・

私がなるほど、と思ったのは条件3「同じ業界で独立した事業を手掛けていること」を独立事業主の要件としていること。つまり、ある会社に専属で従事している場合には、労働者性を認めて従業員としての一定の保護を与えよう、こういった趣旨なのかと思われます。

さて日本の場合、私が関与している建設業の顧問先ではカリフォルニアのギグワーカーと同様の課題があるように思われます。殊に建設業の場合には、国土交通省の指導により、社会保険の未加入事業者を排除する施策を推進していますので、今まで外注扱いだった職人さんをどうやって社会保険に取り込むのか、言い換えれば、外注費としての事業所得を給与所得とどのように折り合いをつけるのか、悩ましい問題となっています。

この問題に対して私の事務所では、例えば今まで毎月40~50万円以上の仕事をしてきた専属の外注職人さんについては、18万円を最低保証賃金として給与所得の取扱いとすることとし、同額を社会保険の報酬月額としています。また、収入の18万円を超える部分に関しては今まで通り本人の事業所得として(会社の外注費として)取り扱うこととしています。

収入の出所が同じなのに、一部を給与収入として残余の部分を事業収入(会社の外注費)とすることに関して、本当に税務上その他の問題がないのかという懸念が生じますが、平成21年の「大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱いについて(法令解釈通達)」において廃止されてしまったという事実があるにせよ、昭和30年の同通達においては、給与収入と事業収入を一定の割合で区分する旨の扱いが定められておりました。

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こうした取扱いに関して、昭和38年の税制調査会への報告では「事業所得と給与所得との限界に関しては、場合によっては実務上の問題があると思われるが、勤労性の高い事業(大工、とび、左官等)について、その収入の一定部分を給与所得の収入とみて課税するという現行の取扱いは、実情に即した適当な措置である」として支持されていたのです。

平成21年の同通達では、給与所得なのか事業所得なのかは明確に区別すべきであるといった考え方を背景に、給与収入と事業収入を一定の割合で区分するといった旧通達の考え方は否定されました。しかし果たしてこうしたブラック&ホワイトな考え方が本当に「実情に即した適当な措置」なのか、むしろ収入の一部を給与収入として社会保険に加入させる方が労働者保護の観点からは適切なのではないか、同通達については今一度見直す時期が来ているような気がします。

そうは言っても、社会保険との関連も出てくるので、税務だけで決めればよい、といったわけではありません。。。そういった意味で、この部分にメスを入れるというのは今の日本では無理な話なんでしょうな、やっぱり。

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