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税理士・中小企業診断士・CFP 篠川徹太郎事務所

資金移動表 その2

「資金移動表」 というのは、あまり知られていない経営分析ツールですが、中小企業の経営を見てゆくうえでは、キャッシュフロー計算書より 「使える!」 と思っております。

「資金移動表」 は、基本的には、キャッシュフロー計算書における 「営業活動によるキャッシュフロー」 について、より有用な分析を加えたものであると考えればよろしいかと思います。

ここで復習ですが ・・・

キャッシュフロー計算書は会社のお金の流れについて、「営業活動」、「投資活動」 および 「財務活動」 に区分して表示します。

通常の場合、固定資産等の購入により 「投資活動におけるキャッシュフロー」 はマイナスです。 会社の業績が良好である場合には 「営業活動におけるキャッシュフロー」 がプラスになり借入金を返済することにより 「財務活動におけるキャッシュフロー」 はマイナスになる、あるいは、会社が業績不振の場合には 「営業活動におけるキャッシュフロー」 がマイナスになり借入により事業資金を賄うため 「財務活動におけるキャッシュフロー」 はプラスになる ・・・ まぁ、ざっとこんな仕組みですよね。

しかし、キャッシュフロー計算書を経営分析に用いても、いまひとつ経営者に響いてこない、そんな気がしています。

というのも、「社長、営業活動によるキャッシュフローがマイナスになっていますから、今期は厳しかったですよね!」 と言っても、まぁ、当たり前のことを言っているにすぎないわけです。これじゃいかんということで、「社長、営業活動におけるキャッシュフローが今期は1千万円になり、前年比20%アップですね!」 などと言えば、少しは社長も興味を示してくれる、ということになります。

結局、「投資活動によるキャッシュフロー」 とか 「財務活動によるキャッシュフロー」、すなわち今期中に固定資産をどれだけ購入して借入金がどれだけ増減したのか、といった情報は経営者の頭の中に既に入っているわけで、そんなものは事後の情報として経営判断には大して役に立たないわけです。

経営者が知りたいのは 「営業活動におけるキャッシュフロー」 の中身ということになるでしょう。

これは、経営者だけでなく、金融機関にとっても同様の事情であると思います。

その会社が経常的にキャッシュを生み出す力はどの程度なのか? この指標を 「経常収支比率」 といいます。

「資金移動表」 は 「経常収支比率」 を計算するためのツールなのです。

ところで、「資金移動表」 は 「資金運用表」 や 「資金繰り表」 とあわせて資金3表と呼ばれたり、あるいは 「キャッシュフロー計算書」 も含めて資金4表と呼ばれたりしています。私の理解では、「資金移動表」 は 「キャッシュフロー計算書」 を補充するもの、すなわち 「営業活動におけるキャッシュフロー」 に有用な情報を付加するものであって、「資金運用表」 や「資金繰り表」 と同列で論じられるものではないんじゃないかな~と思っております。

そういった意味では、「資金移動表」 といったネーミングはあまり良くないですよね。

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