とりとめのないブログ・・・

税理士・中小企業診断士・CFP 篠川徹太郎事務所

工業簿記の問題 その2

先の記事 「工業簿記の問題」 で触れた問題について、最近出版された本でも触れられていたので紹介します。 shinokawa-office.hatenablog.com

f:id:shinokawa-office:20170103164051j:plain

この本の中に、「いつまでも仕掛中の製造指図書の存在」 というコラムがあり、問題点が指摘されています。 少し長いですが引用させていただきます。

個別原価計算を実施している会社の仕掛品の中身をみてみると、当月の工事原価の発生がない古い製造指図書番号の工事や開発がみられます。前月分をみても、前月に発生がない。つまり、仕掛中ではあるけれどもすでに業務が行われていないという工事や開発があるのです。 -------------- 経理部門では、仕掛品の一覧を入手して、製造指図書の納期を過ぎているものや最近の原価の発生がないものについて、製造現場に問い合わせをかけるといった作業を少なくとも年に1度、決算を迎える前にはには行うようにしたいものです。そうでないと、当期の費用になるべきものがいつまでも仕掛品残高として資産に計上されたままになってしまいます。それでは期間損益計算が歪められるし、不良資産を計上していることになってしまいます。

上の引用では、会社の現業部門が勝手に計上した仕掛品を経理部門では年に1度はチェックしなさい、といった風に読めますが、経理(管理)部門の許可なしで現業部門が独自の判断で仕掛品の計上を行うなど、日本の製造業の企業風土からは実際のところ考えられないのではないでしょうか?

工業簿記は通常の簿記よりも技巧的な側面が強く、またなんつーか、現業部門を下に見るような考え方・ものの見方が工業簿記自体にビルトインされているため、会社組織内において経理については経理部門以外の人が口を挟みにくい雰囲気が醸成されていたりするケースが多くないですか?

そうすると、「仕掛品勘定」 の金額が実態とはかけ離れていって、結局は経理部門の意向による利益調整に用いられている ・・・・ というのが我が国における工業簿記の実態ではないかと思われるのですが、どうでしょうか?!

shinokawa-office.com