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税理士・中小企業診断士・CFP 篠川徹太郎事務所

在庫担保のABLはお勧めできない

ABL (Asset Based Lending)  という資金調達の手法が注目を集めており、金融庁でも今年の2月に「ABL (動産・売掛金担保融資) の積極活用について」という案内を、金融機関向けおよび中小企業者向けに発表しています。 以下、抜粋。

中小企業等が経営改善・事業再生等を図るための資金はもとより、新たなビジネスに挑戦するための資金を確保することが、現下の重要な課題となっており、「動産・売掛金担保」 の一層の活用が図られれば、このような資金がより円滑に確保され、中小企業等の経営改善や事業の拡張等に資することが期待される。

このうち、売掛金を担保としたABLは、まぁ一種の手形割引みたいなものなので、子会社等を利用した悪質なものでない限り、さほど問題は無いものと思われます。また、機械設備などを担保としたABLも、不動産担保と似たようなものなので、問題にはならないと思われます。

問題は、製品在庫を担保としたABLではないでしょうか?

ABL による借入を行うような不振企業は往々にして過大な製品在庫を抱えているものです。こうした過大な製品在庫に見合った過大な借入を行い、さて事業再生の局面になった場合には、在庫の叩き売りによるキャッシュの創出が必要になってくるが ⇒ そうするとABLで借りた借金を返さなければいけなくなる ⇒ 借金返済原資が無いため在庫削減にも踏み込めない ⇒ 事業再生が進まない ・・・ こうした負のスパイラルに陥る可能性が高くなります。

また、在庫品を担保としたABLの貸し手は、全国展開しているようなリース系の金融機関が主であると思われますが、そうしたリース系金融機関に、当該企業の事業再生における在庫削減の必要性を良く理解してもらい、返済猶予あるいは借入可能限度額の保持をお願いするというのは、なかなか難しいのではないかという気がします。

つまり、同じABLといっても、売掛金や機械設備を担保とする場合と在庫品を担保とする場合では、同列に論じることはできないと思うのですが、どうでしょうか?

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