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税理士・中小企業診断士・CFP 篠川徹太郎事務所

消費税の罠:中国の還付率

お隣の国、中国では、日本の消費税に相当する税目を「増値税」と呼称しています。

ヨーロッパで使われている「付加価値税」 (Value-Added Tax)  の音読みといった風情ですよね。

日本における消費税と課税の骨組みは同じであるにもかかわらず、実際の運用では随分と違いがあるようなので、比較してみるのも面白いのではないかと思いました。

そうは言っても、私は中国に行ったこともないし、中国相手のビジネスを担当したこともないので、いろいろとご批判などいただけたら嬉しく思います。

さて ・・・・ 中国の増値税について面白いと思ったのは、輸出の際の還付税額の計算について特異な仕組みが採用されていることです。

まぁ、この還付税額計算の仕組みは極めて複雑なようで、JETRO の説明 などを読んでも何が何だか良く分かりませんが ・・・・ ポイントは、「還付率」といったものを個別のケース毎に定め、そのことにより、輸出に際しての仕入税額が常に全額還付されるわけではないという点でしょう。

この点が日本における消費税の仕組みと大きく異なっています。日本においては、輸出免税の規定により、仮に輸出100%の企業であれば、国内仕入に係る消費税額は常に全額還付されることになります。

これに対して、中国の場合は、「還付率」といった政策的に可変な数値を駆使して、輸出の抑制や促進、ひいては国内産業の統廃合まで見据えた税務行政を行っているように見受けられます。

少し古くかつ長いですが、日経の記事からの引用 (平成22年6月23日) ・・・・

中国財政省と国家税務総局は、鋼材や非鉄金属、プラスチックの一部など406品目について、輸出時に税金を還付する措置を撤廃すると発表した。 ・・・ 生産過剰業種の製品輸出を抑制し、古くなった設備の廃棄を進める狙いがあるとみられる。 ・・・・・ 中国は金融危機の影響で輸出の落ち込みが鮮明になった2008年夏以降、輸出企業を支援する狙いで付加価値税の一種である「増値税」の還付率を相次いで引き上げた。今年に入って輸出が持ち直したため、輸出支援策を段階的に撤廃していく方針とみられる。

こうした中央政府による市場経済への介入を、自由経済に対する国家の介入であり、かつての日本がやっていたような古臭いやり方だと一蹴するような方々もいらっしゃることでしょう。

しかし、その前に ・・・・ 日本の消費税の仕組みが輸出に際して無条件に税額還付を認めている無条件な「輸出支援策」であるという現実、さらには、消費税の仕組みそのものが輸出企業に対する隠れた補助金になっているという現実について、思いをめぐらせてみる必要があるのではないでしょうか?!

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