ULハイクというか快速登山というか、そういった山登りのカテゴリーは私の若い頃はそれほど一般的ではなかったけど、今やトレランの隆盛と共にULハイクに関する装備の進化や情報の充実には目を見張るものがある。なんといってもTJARという日本アルプスを舞台としたレースの定着とそこからもたらされる膨大な知見が快速登山の発展に一役買っていることは間違いない。
私のようなオールド山登りする人にとって、こうした快速登山スタイルは誠に刺激的なものなので、何とか実現してみたいと思い、マラソンや富士登山競争に出て体力面を整備しつつ、装備面では目立たぬようにちょこちょこと2年ほどかけてUL装備を買いそろえ、ようやく泊りでの快速登山にトライすることができた。
【1日目】
毎日あるぺん号で八王子を午前0時出発、甲斐駒ヶ岳登山口には午前3時頃到着。真っ暗な中歩き始めると、同じくULハイク(もしくはトレラン)な人2名ほどにすぐに抜かされる。
しばらく歩くと黒戸尾根に日が差してきた。
刃渡りを渡るそよ風が気持ちいい。
だいぶ上ったけど、まだまだ先は長い。
この辺りからトレランな人々に続々と抜かされる。みんな強ぇ。。
甲斐駒ヶ岳には10時ちょっと前に到着。登山口から6時間半ほど。
全然快速じゃないや~ん!
甲斐駒の山頂は混んでいたためすぐ下り。北沢峠への道からの仙丈ケ岳を眺め、本当に快速な人は北沢峠から仙丈ケ岳を越えて両俣小屋に入るんだろうな・・・と思いつつ、今の私には無理っす。
北沢峠には12時30分着。林道を歩いて先ずは野呂川出合まで。仙丈ケ岳に登ったというインド人と楽しく会話しつつ歩く。
野呂川出合からはひたすら林道を歩き両俣小屋まで。両俣小屋は10年ほど前に次男と泊まった思い出のあるところ。
両俣小屋に向かう道の途中から甲斐駒ヶ岳を遠くに望む。あの山の向こうからあの山を越えて歩いてきたなんて、自分のことながらにわかには信じ難い気がする。
そういえば昔っからこんな看板あったなぁ。時間はだいたい(?)正確だよ。
両俣小屋には4時着。小屋番の星さんが相変わらずお元気そうで、何よりでございます。昔頂いた動物の骨は今でも大切にしております。お忙しそうだったので言いそびれましたが、林道の途中で会ったともちゃんがよろしくとのことでした。。。
夜はヘリテイジのトレイルシェルターにて、エスケープライトヴィヴィにくるまって寝たが、寒かった。やはり僕には寝袋が必要だ。
【2日目】
0時30分に出発。野呂川越えから仙塩尾根へ、暗闇の中をひたすら歩く。
三峰岳の手前で視界は開けてくるが、夜明け前なのでガレ場のルートファインディングがなかなか難しかった。
間ノ岳には4時45分着。少し風がある。
下り始めると日の出。
間ノ岳から農鳥岳への山稜は本当にいいところや。ロケーション最高!
だけど、農鳥小屋の評判は良くないみたいだね。結局、時代の波に取り残されてしまったんだと思う。
静かな西農鳥の山頂。何も音がしなくて気持ち良い。
下降点には8時着。ここまで予定通りでホッとする。
でもここから奈良田までが地味に長いのよ。。。
真面目に歩いて、奈良田には1時ちょっと前に着く。
やったー、無事予定通り完走!
でも、奈良田の寂れ具合が少し気になる。
昔は奈良田といえば南アルプスの玄関口としてそれなりに存在感があったけど、今では広河原までバスが通じるようになったため、奈良田は単なる通過点になってしまった。
せっかく良い温泉もあることだし、歴史と伝統のある集落なので、やり方次第ではもう少し何とかなるんじゃないかと思ったりしますが・・・
広河原が南アルプスの玄関口として益々栄えているのと反比例して、奈良田が寂れているのではないかという気がする。というのも、広河原は芦安が最寄の集落になるので、広河原が栄えれば栄えるほど芦安(現在の南アルプス市)が潤い、逆に奈良田は寂れてゆく、といった構図になってしまっているのではないだろうか。
その昔、地下鉄サリン事件が起こった日、当時の私は霞が関を最寄り駅とするサラリーマンしていたのだが、気分的にとってもイヤ~な感じがしたので会社から有給休暇をもらって家族で奈良田温泉・白根館に泊まったことがある。そのまま出勤してたら、もしかしたら地下鉄サリン事件に巻き込まれていたかもしれない。そんな私にとっての癒しの地、奈良田が寂れているのは残念この上ない。一方で、近隣の西山温泉は日本最古の温泉宿と銘打って観光客を集めているではないですか?!
奈良田には頑張って欲しいです!!