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税理士・中小企業診断士・CFP 篠川徹太郎事務所

23年分確定申告における寄付金の取扱い

昨年の震災の影響もあり、今年の確定申告では寄付金についての問い合わせが多くなるものと予想されます。

寄付金についての税制はかなり複雑なのですが、税務上の取り扱いについて分かりやすく説明している例はあまり見当たらないような気がしています。

そこで、私自身の頭の整理も兼ねて、まとめてみることにしました!

(1) NPO法人等に対する寄付金に係る税額控除の創設

実は、震災が起こる前の2010年の12月に、平成23年改正として寄付金税制の大きな改正が行われていたのです。 それ以前は政党や政治資金団体に対する寄付金についてしか認められていなかった税額控除の規定を、認定NPO法人公益法人等に対する寄付金についても認めることとしたのです。 したがってこの場合、従来通りの所得控除を選択するのか、それとも税額控除を選択するのか、有利不利の判定が必要になってきます。 認定NPO法人等に対する税額控除額は ・・・ (特定寄附金の額 - 2,000円) × 40% ここで、40% というのは所得税最高税率であるため、結局、税額控除を選択した方が有利ということになります。 なお、控除限度額は、所得控除の場合は総所得金額等の40%、税額控除の場合は所得税額の25%です。

(2) 震災特例の概要

東日本大震災に関連して義援金などを支払った場合について、国税所得税) と地方税 (住民税) に区分して検討してみる必要があります。

(2-1) 所得税について

国税庁ホームページには、東日本大震災関連の国税庁からのお知らせ寄附金・義援金 として、さまざまな情報が集約されています。 このなかの「義援金等に関する税務上の取扱いについて」というページにおいて、個人が支出した義援金等を 「特定寄附金」 と 「特定震災指定寄附金」 とに区分しています。 そして、「特定寄附金」 については所得控除だけが適用となり、「特定震災指定寄附金」 については所得控除と税額控除の選択適用となることが明らかにされています。 では、「特定寄附金」 と 「特定震災指定寄附金」 の違いは何かということになりますと、「特定寄附金」 に該当する震災関連寄附金12項目のうち、⑤と⑥だけが 「特定震災指定寄付金」 に該当することとされています。

社会福祉法人中央共同募金会の「災害ボランティア・NPO活動サポート募金」として直接寄附した義援金等 ⑥ 認定NPO法人に対し、東日本大震災の被災者支援活動に特に必要な費用に充てるために行った寄附金

逆に言うと、この2項目以外の義援金等については、税額控除の適用は受けられない、ということを言っているんですね。。。

確定申告の実務上、注意すべきポイントかと思います。

(2-2) 住民税について

住民税について、国税庁ホームページのどこを探しても何も記載はありません。 住民税を所掌しているのが国税庁財務省)ではなく、総務省だからです。 同様の理由で、「所得税」確定申告の手引のどこを探しても、住民税のことについては (ほんの少ししか) 記載はありません。

しかし、寄付金の取り扱いについて、住民税の申告においても大いにかかわってくるので、注意が必要です。

総務省のホームページには、震災関連の義援金等が 「ふるさと寄附金」 に係る税額控除の対象となることが明らかにされています。

ところで、「ふるさと寄附金」って一体何だっけ?? ということになります。 以前であれば、地方公共団体に寄付することなど、通常は考えられなかったため 「ふるさと寄附金」 の詳細について調べたこともなかったのですが、今回の震災で一躍脚光を浴びてしまった 「ふるさと寄附金」 の概要について理解しなければなりません。

総務省の資料によると、住民税における寄付金税額控除の仕組みは下記の通りです。

基本控除額 = (寄附金 - 2,000円) × 10% 特例控除額 = (寄附金 - 2,000円) × (90% - 0 ~ 40% {寄附者に適用される所得税の限界税率})

つまり、基本控除額と特例控除額を合計することにより、「ふるさと寄附金」 の住民税からの控除額が計算されるという仕組みになっています。 なお、基本控除額については総所得金額等の30%、特例控除額については住民税所得割の10%が控除限度額です。

さて、国税とは異なり、地方税の場合は震災関連の寄付金をあまり細かく区別せず、たとえば東京都のホームページでは 「義援金」 と 「支援金」 とに区分して、それぞれの取扱いについて明記しています。

義援金」 に該当する場合には 「ふるさと寄附金」 の取扱いになるわけですが、注意していただきたいのは、確定申告書第二表における記載欄です。

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確定申告書第二表には、「住民税に関する事項」 のうち 「寄附金税額控除」 を記載する欄があります。こちらの記載欄は4ヶ所に分かれているのですが、震災関連の寄付金が「義援金」に該当する場合には 「都道府県、市区町村分」 にその額を記載することになります。「住所地の共同募金、日赤支部分」 の欄に記載するわけではないんです!

通常の場合ですと、都道府県共同募金会や日本赤十字社支部に対する寄付金は上記 「基本控除額」 に対応する寄付金ということになるのですが、今回の震災関連の義援金は 「ふるさと寄附金」 に該当する旨の取扱いであるため、住民税においては都道府県や市区町村に直接した寄付金と同様の取扱いになっているのです! よろしいでしょうか?

また、NPO法人などに対する 「支援金」 の取り扱いですが、こちらは上記 「基本控除額」 (10%の税額控除) のみの対応になります。確定申告書第二表 「住民税に関する事項」 の記載欄は、「条例指定分」 として 「都道府県」 と 「市区町村」 に分けて記載することになります。

この場合には、各々のNPO法人等について、各地方公共団体ごとの条例指定の状況を調べなければならないというのが厄介なポイントかと思われます。

(3) まとめ

震災関連の寄付金を区分するにあたって、国税が行っているような詳細な区分よりも、たとえば東京都がしているように 「義援金」 と 「支援金」 というようにシンプルに区分した方が分かりやすいと思います。

適用関係は大まかに言って次のようになります。

国税 地方税 還付率 (注)
義援金 所得控除 基本控除額+特例控除額 (ふるさと寄附金) 100%
支援金 税額控除 基本控除額 50%

(注) 還付率とは、適用下限額の2千円を引いた後の金額に対するもので、控除限度額については考慮していません。

なお、上述の通り、「支援金」 については、各地方公共団体ごとの条例指定の状況を調べなければ正確な申告は出来ないということになるのですが、国税で認定しているNPO法人であればたとえ条例で指定していなくても 「条例指定寄附金」 として取り扱って差し支えないのではないか ・・・ というのは言い過ぎでしょうか?

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