当ブログでは、「源泉所得税の改正のあらまし(平成22年4月)」や「年少扶養控除の廃止による増税額を試算してみた」という記事において、子ども手当と年少扶養控除の廃止にまつわる問題点を指摘してきたわけだが、どうも予想通り、子ども手当の全額支給は見送られる方向になってきている。
shinokawa-office.hatenablog.com shinokawa-office.hatenablog.com その一方で、年少扶養控除の廃止の是非については、新聞などのマスコミにおいて、話題にすらなっていない。
これは本当におかしな話で、子ども手当の満額支給(2万6千円)と年少扶養控除の廃止は本来はワンセットの政策であった筈です。
それを、なし崩し的に子ども手当だけを削っておいて、しかもなお年少扶養控除の廃止については予定通りに進めるということになると、結局は子育て世代の負担増という、何といいますか、有権者をバカにした結果になる可能性があります。
年少扶養控除の廃止による増税は来年以降の話になってくるので、まだピンと来ないのかもしれないけど、2010年中には決めなければいけない話だし、その割には、子ども手当と増税の関係について分かりやすく説明している例はあまり見当たらないような気がする。
そこで、「年少扶養控除の廃止による増税額を試算してみた」において増税額を試算していますが、今一度、国税(所得税)と地方税(個人住民税)に分けて、子ども手当と増税の損得について試算してみることにします。
想定したのは、16歳未満の子どもが2人で奥さんは専業主婦、ご主人が40歳以上であるサラリーマンのご夫婦です。
社会保険料率などの計算根拠は前掲に記事に準じます。
子ども手当の月額が現行の1万3千円とすると、想定例では子ども2人なので、13,000 × 12 × 2 = 年額 312,000 円ですね。
年収 | 300万円 | 500万円 | 800万円 |
---|---|---|---|
給与所得控除後の所得金額 | 1,920,000 円 | 3,460,000 円 | 6,000,000 円 |
社会保険料控除額 | 403,500 円 | 672,500 円 | 1,076,000 円 |
現行の年税額 (国税) | 0 円 | 63,300 円 | 253,300 円 |
現行の年税額 (地方税) | 23,600 円 | 150,700 円 | 364,400 円 |
年少扶養控除廃止後 (国税) | 37,800 円 | 105,200 円 | 405,300 円 |
年少扶養控除廃止後 (地方税) | 89,600 円 | 216,700 円 | 430,400 円 |
増税額 (国税) | 37,800 円 | 41,900 円 | 152,000 円 |
増税額 (地方税) | 66,000 円 | 66,000 円 | 66,000 円 |
増税額・合計 | 103,800 円 | 107,900 円 | 218,000 円 |
子ども手当 (2人分) | 312,000 円 | 312,000 円 | 312,000 円 |
差額 (年額・子ども2人分) | + 208,200 円 | + 204,100 円 | + 94,000 円 |
試算の結果、いかがでしょうか?
「なるほど、こんなものか」と考えるのか、それとも ・・・
ところが!
上記以外にも、子ども手当の創設により現行の児童手当が廃止になるという点も考慮に入れる必要があります。
現行の児童手当は、小学校までの児童1人あたり月額 5,000 円、3歳未満の赤ちゃんには月額 10,000 円 支給することになっています。設例のご家族で、仮に月額 15,000 円の児童手当を受給していたと仮定すると、そのマイナス分は年額 180,000 円。そうすると、子ども手当のメリットなどなくなってしまいますね ・・・ むしろ逆に、負担増になるご家庭もきっと出てきます。
いずれにしても、子ども手当や年少扶養控除廃止に関して、民主党は重大な公約違反を犯しています。税制や社会保険の根幹にかかわる問題について、このようになし崩し的に決めてしまってよいものなのかどうか、疑問が残ります。